正直、初めてこのドミノのCMを見たとき、私はテレビの前で固まりました。
「え、ピザのはずなのに全然おいしそうに見えない…」って。
普段ならチーズの糸を見ただけで「よし、今夜はピザ！」となる私ですが、このCMを見た瞬間は逆に食欲がスッと引いてしまったんです。
SNSを覗いてみると、同じように感じた人が山ほどいて、ちょっと安心しました。
「目線が合ってないの怖すぎる」「笑顔が固まってて夢に出てきそう」なんてコメントもあって、思わず吹き出してしまったほどです。
違和感の正体
よく考えると、この違和感は“人っぽいけど人じゃない”からくるものなんですよね。
目は笑っていないのに口角だけが上がっているとか、瞬きのタイミングが妙に機械的だったり。
私も二度三度見返しているうちに「うわ、これやっぱりAIだわ」と確信しました。
まさに“なんとなく怖い”を説明するなら「不気味の谷」そのもの。
食品広告だからこそ響いた
冷静になってみると、服の広告やゲームのPVならここまで違和感は残らなかったかもしれません。
でもピザです。ご飯です。食べるシーンって「温かさ」「香り」「人のリアクション」まで含めて伝わるものですよね。
私はピザが好きだから余計に「なんか損した気分」になりましたし、SNSでも「ピザがまずそうに見える広告って逆効果でしょ」という声が目立ちました。
やっぱり食べ物は、人間が美味しそうに頬張る姿に勝るものはないのかもしれません。
食品広告でAIが難しい理由—「おいしそう」の再現性
五感を刺激する“揺らぎ”が足りない
私も最初にドミノのCMを見たとき、「なんで食欲がわかないんだろう？」と不思議に思いました。
ピザって普通なら、チーズが糸を引くだけで「お腹すいた！」ってなるじゃないですか。けれど、この映像ではそれが伝わってこない。
よく考えると、本物の食べ物には“ムラ”や“偶然”があるんですよね。
チーズの焦げ目のバラつき、湯気のふわっとした揺れ、脂のキラッと光る瞬間…。こういう小さなランダムさが、五感を刺激して「おいしそう」と脳にスイッチを入れてくれる。
でもAIで作られた映像は、どうしても均一で整いすぎていて温度感が伝わりにくい。そこが“食欲トリガー”を外してしまうんだと思います。
清潔感と安心感も大事
さらに食品広告では、「見た目の清潔感」や「人の手が入っている安心感」も欠かせません。
実際、人の手元が映っていたり、立ちのぼる湯気がカメラにかかるだけで“作りたて感”が増して、食べたい気持ちになるものです。
SNSでも「マネキンが食べてるみたいで信用できない」「誰が作ってるのかわからなくて怖い」という声が出ていました。
やっぱり“口に入れるもの”は信頼が命。ここをAI映像だけで補うのは、まだまだ難しい壁だと感じました。
どうすれば“違和感”を超えられる？
じゃあ、この“違和感”をどう乗り越えればいいのか。現場の人の声や自分の感覚を参考にすると、いくつかの改善策が見えてきます。
まずは ハイブリッド制作。たとえば、手元や湯気のように“温度を感じる部分”だけは実写で撮影し、背景や小物はAIで補完する。そうすれば、人のぬくもりと効率性を両立できそうです。
次に “同期検品”の仕組み。目や口、瞬き、呼吸といった細かい動きがちゃんと噛み合っているかを段階ごとにチェックする体制が必要です。
さらに “おいしさ指標”の数値化。たとえば「チーズの糸引きが何フレーム続くか」や「湯気の立ち上がりの量」といった基準を設け、それを満たせない場合は実写で差し替える。こうした工夫が“食欲をそそるかどうか”の判定に役立つはずです。
加えて、ブランドごとのルール化も大切です。食品のように“安心感”が絶対条件の分野では、基本的に実写優先。逆に「未来感」や「話題性」を狙う場面だけAIを使うといった線引きが求められるでしょう。
そして最後に、AI活用をオープンに伝えること。たとえば「未来的な映像表現に挑戦しました！」と正直に伝えれば、不気味さよりも“新しい試み”としてポジティブに受け取ってもらえる可能性が高まります。
5年後のAI広告は受け入れられる？
技術の進化で、レンダリングや表情の精度は確実に上がるはずです。違和感は小さくなるでしょう。 でも食品や化粧品のように“身体に入れる・触れる”ものは、完全にAIに置き換えるのではなく、実写と組み合わせるハイブリッド型が主流になると思います。
結局、映像がどれだけリアルに見えても、大切なのは「共感できるかどうか」。 作り手の思いや、人が美味しそうに食べる姿があるからこそ心が動く。 今回のCMはそのことを改めて気づかせてくれる出来事でした。
自分なりの考察
一方で、「これはあえて狙ってやったんじゃないか？」とも思います。
だって結果的に「ドミノのCM見た？」って会話が広がったのは事実。バズという意味では大成功です。
ただ私は、日常的にピザを頼む側の立場からすると「また食べたい」と思わせる安心感の方が大事だなあと感じました。
不気味さで注目を集めるのは一瞬。でも“おいしそうで信頼できる”イメージがブランドの命綱だと思うんです。
まとめ
ドミノのAI CMは、技術の最先端と同時に「人間らしさの大切さ」も浮き彫りにしました。 食品広告においては、AIでリアルに見せること以上に「温度感」や「共感」をどう表現するかがカギ。 これからの広告は、AIと人の強みをどう組み合わせるか、そのバランス感覚が問われていくはずです。
